「睡眠は7時間が理想」「8時間は寝ないといけない」――そんな情報を目にすることは多いですが、実際に“自分にとっての適切な睡眠時間”を説明できる人は少ないのではないでしょうか?
朝起きても疲れが取れない、日中に強い眠気を感じる、休日にまとめて寝てしまう。こうした状態が続いている場合、単純に睡眠時間が足りないのか、それとも時間以外の問題があるのかを見極める必要があります。
この記事では、厚生労働省の指針や国際的な睡眠医学の推奨値をもとに、成人・高齢者・子どもそれぞれの睡眠時間の目安を整理します。あわせて、「長く寝れば良い」という単純な話ではない理由も解説します。
理想の睡眠時間は一律ではありません。科学的な基準を確認しながら、自分の生活に合った“現実的な最適値”を考えていきましょう。

理想の睡眠時間の科学的根拠|公的機関の推奨値

睡眠時間の目安は感覚ではなく、研究データに基づいて示されています。代表的な公的機関の推奨値を確認します。
成人(18〜64歳)の推奨睡眠時間
米国睡眠医学会(American Academy of Sleep Medicine)およびSleep Research Societyは、成人は「7時間以上」の睡眠を確保することを推奨しています。7
時間未満の睡眠は、心血管疾患、肥満、糖尿病、うつ症状などのリスク上昇と関連すると報告されています。
- 推奨:7時間以上
- 一般的な目安:7〜9時間
- 6時間未満は健康リスク増加の可能性
高齢者(65歳以上)の目安
高齢者についても基本的な推奨は7時間前後とされています。ただし、加齢に伴い中途覚醒が増える傾向があり、睡眠時間よりも「日中の活動性」が評価指標として重要になります。
- 推奨目安:7〜8時間
- 途中で目が覚めても日中元気なら問題は少ない
睡眠時間は「長ければよい」というものではなく、健康リスクとの関連を踏まえた適切な範囲が示されています。次に、年齢別の具体的な目安を整理します。
理想の睡眠時間の科学的根拠|なぜ「7時間以上」が基準なのか

「7時間以上」という推奨値は感覚的な目安ではありません。複数の大規模疫学研究により、睡眠時間と死亡率・生活習慣病リスクとの関連が長期追跡で分析され、その結果として示された基準です。
成人に7時間以上が推奨される理由
国際的な睡眠医学のガイドラインでは、18〜64歳の成人は定期的に7時間以上の睡眠を確保することが健康維持に有益とされています。
これは、数万人規模の追跡研究において、睡眠時間が6時間未満の群で以下のリスク上昇が確認されたためです。
- 高血圧の発症リスク上昇
- 2型糖尿病リスクの増加
- 肥満傾向との関連
- 抑うつ症状の増加
- 心血管疾患リスクの上昇
特に慢性的な短時間睡眠は、自律神経のバランスを崩し、血圧や血糖の調整機能に影響を与えることが報告されています。そのため「週に何日か短い」ではなく、習慣的に7時間未満であることが問題視されています。
なぜ「8時間」ではなく「7〜9時間」なのか
睡眠には個人差があります。遺伝的要因や体質、日中の活動量、ストレス負荷などによって必要な睡眠時間は異なります。そのため、固定的に8時間が正解とは定義されていません。
研究データでは、7〜9時間の範囲で健康指標が最も安定する傾向が示されています。7時間を下回るとリスクが上昇し、逆に9時間を大きく超える長時間睡眠でも、基礎疾患との関連が指摘される場合があります。
重要なのは、「何時間寝たか」だけでなく、
- 日中に強い眠気がないか
- 集中力が保てているか
- 休日に極端な寝だめをしていないか
といった機能面で評価することです。時間は目安であり、体調が最終的な指標になります。次の章では、年齢別に必要な睡眠時間の違いをより具体的に整理します。
年齢別に見る理想の睡眠時間|子どもから高齢者までの目安

睡眠時間の必要量は、生涯を通じて一定ではありません。成長段階や身体機能の変化に伴い、推奨される睡眠時間は明確に異なります。ここでは国際的な睡眠医学の推奨値をもとに、年齢別の目安を整理します。
子ども・思春期の睡眠時間
成長ホルモンの分泌や脳の発達が活発な時期は、成人よりも長い睡眠が必要とされています。慢性的な睡眠不足は、学習能力や情緒の安定に影響を及ぼす可能性があります。
- 小学生(6〜12歳):9〜12時間
- 中高生(13〜18歳):8〜10時間
特に思春期は体内時計が後ろにずれやすく、就寝時刻が遅くなる傾向があります。しかし、必要な睡眠時間そのものが減るわけではありません。早朝登校とのギャップが慢性的な睡眠不足を生みやすい年代です。
成人(18〜64歳)の睡眠時間
成人では7〜9時間が一般的な推奨範囲とされています。仕事や家庭の都合で睡眠時間が削られやすい年代ですが、6時間未満が習慣化すると生活習慣病リスクが上昇する可能性が報告されています。
重要なのは、「平日は短く、休日に寝だめする」という不規則なパターンを続けないことです。睡眠の量と同時に、規則性も健康指標に影響します。
高齢者(65歳以上)の睡眠時間
高齢になると深い睡眠の割合が減少し、夜間の中途覚醒が増える傾向があります。そのため「若い頃より短くなった」と感じやすいですが、推奨目安自体は7〜8時間前後と大きくは変わりません。
- 目安:7〜8時間
- 日中に強い眠気がなければ過度に心配する必要はない
睡眠時間が多少短くても、日中に活動性が保たれている場合は問題がないケースもあります。逆に長時間寝ているにもかかわらず倦怠感が強い場合は、睡眠の質や基礎疾患の影響を考慮する必要があります。
次の章では、「短時間睡眠」と「長時間睡眠」が健康に与える影響について詳しく整理します。
短時間睡眠と長時間睡眠のリスク|時間が極端になると何が起きるか

理想の睡眠時間は「長ければ長いほど良い」という単純なものではありません。研究では、睡眠時間が極端に短い場合だけでなく、極端に長い場合にも健康リスクとの関連が示されています。
短時間睡眠(6時間未満)の影響
慢性的に6時間未満の睡眠が続くと、身体の回復機能や代謝調整機能に影響を与える可能性があります。特に報告されているのは以下のような点です。
- 高血圧の発症リスク上昇
- 耐糖能異常(血糖コントロール低下)との関連
- 肥満傾向の増加
- 抑うつ症状や不安症状の増加
- 注意力・判断力の低下
睡眠不足が続くと、自律神経が交感神経優位の状態になりやすく、血圧や心拍数が高い状態が持続しやすくなります。また、食欲を調整するホルモン(レプチン・グレリン)のバランスが崩れることも報告されています。
重要なのは、「一時的に短い」のではなく慢性的に不足していることが問題である点です。
長時間睡眠(9〜10時間以上)の注意点
一方で、9〜10時間を超える長時間睡眠についても、死亡率や慢性疾患との関連を示す研究があります。ただし、ここで注意すべきなのは因果関係です。長時間睡眠そのものが原因というよりも、
- 基礎疾患の存在
- うつ状態による過眠傾向
- 慢性疲労や炎症性疾患
といった背景要因が影響している可能性が指摘されています。つまり、長く寝ていること自体を問題視するのではなく、「長く寝なければならない状態になっていないか」を確認することが重要です。
最も安定しやすい睡眠時間帯
多くの疫学研究では、7〜9時間の範囲にある人の健康指標が比較的安定する傾向が示されています。これはあくまで統計的傾向であり、個人差は存在しますが、極端な短縮や延長は避けることが一つの目安になります。
次の章では、「自分にとって適切な睡眠時間」をどのように判断すればよいのか、具体的なチェック方法を整理します。
自分にとっての理想の睡眠時間を見つける方法

推奨値はあくまで目安です。最終的に重要なのは、「自分の身体が十分に回復しているかどうか」です。ここでは、客観的に睡眠の充足度を判断するための視点を整理します。
① 日中の状態で評価する
睡眠が足りているかどうかは、起床直後よりも日中のパフォーマンスで判断するのが合理的です。
- 午前中から強い眠気がある
- 集中力が続かない
- 休日に2〜3時間以上寝だめをしてしまう
- カフェインがないと活動できない
これらが習慣化している場合、睡眠時間が不足している可能性があります。
② 睡眠の「規則性」を確認する
睡眠時間の長さと同じくらい重要なのが、就寝・起床時刻の安定です。不規則な生活は体内時計を乱し、実際の睡眠時間が十分でも疲労感が残りやすくなります。
- 平日と休日の起床時刻の差は1時間以内に抑える
- 就寝時刻を毎日大きく変えない
この社会的時差ボケを小さくすることが、質の高い睡眠につながります。
③ 1〜2週間の記録で調整する
理想の睡眠時間を探るには、いきなり大きく変えるのではなく、30分単位で調整しながら1〜2週間記録を取る方法が有効です。例として、
- 現在6時間睡眠 → 6時間30分へ延長
- 日中の眠気が改善しなければ7時間へ
というように段階的に増やします。逆に長く寝すぎている場合も、少しずつ調整します。重要なのは時間の数字よりも、起床時の回復感と日中の安定感です。次の章では、本記事の要点を整理します。
まとめ|理想の睡眠時間は「7時間以上」を目安に調整する

理想の睡眠時間は一律ではありませんが、科学的な推奨では成人は7時間以上が基本的な目安とされています。多くの疫学研究で、7〜9時間の範囲が健康指標と安定的に関連していることが示されています。
- 成人:7〜9時間が一般的な推奨範囲
- 子ども・思春期:8〜12時間(年齢により異なる)
- 高齢者:7〜8時間を目安に日中の活動性で判断
6時間未満の慢性的な短時間睡眠は、生活習慣病やメンタルヘルスへの影響と関連する可能性があります。一方で、9〜10時間を大きく超える長時間睡眠についても、基礎疾患との関連が指摘される場合があります。
最終的な判断基準は「日中の状態」です。起床時の回復感、日中の眠気、集中力の持続などを総合的に確認しながら、自分にとって安定する睡眠時間を探ることが重要です。
まずは現在の睡眠時間を客観的に把握し、30分単位で調整しながら、身体の反応を観察していきましょう。数字だけにとらわれず、生活全体のバランスを基準にすることが、理想の睡眠時間を見つける近道です。
参考資料・出典


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